NHK趣味の園芸」でおなじみ
江尻光一さんの洋ランファンタジー

 洋ランの栽培にかかわって50年の江尻光一さん。豊富な経験と知識、穏やかなお人柄で、長年「NHK趣味の園芸」に講師として出演されているほか、テレビ、ラジオ、雑誌、講演などを通して広く洋ラン栽培の指南、普及にかかわってこられ、一般の園芸愛好家にもお馴染みの方。
 千葉県市川市にある、江尻さん経営のラン栽培専門「須和田農園」をお訪ねし、日本における洋ランのあゆみ、今後の方向性などについてお話いただいた。


(江尻光一氏)

洋ランの歴史はシクラメンから…  − 花のギフトが果たした役割 −

 「洋ランが広く一般に広まり出したのは昭和52〜3年頃からでしょう。その少し前『シクラメンのかほり』という歌が流行って、シクラメンがブームを呼びましてね。オイルショックの暗い世相から、人々が明るさを求めて立ち上がっていった時代にマッチしたのでしょうか、シクラメンがギフト用に爆発的に出回り、花のギフトの先鞭となりました。
 その後を追うように洋ランがギフトに使われ始めたのです。宅配便の普及も花のギフトが一挙に伸びた一因です。」
 昭和45年、メリクロン苗が日本に初めて導入され、それが咲き始めた昭和50年頃から洋ランの量産が可能になり、飛躍的に広まったという。
 「ランは同じ親から生まれても同じ花は咲かない。それがメリクロン苗によって同じ個体が一度に何万本も生産できるようになったのです。シンビジュームがシクラメンに変わってギフトに使われるようになり、いただいた人がその管理を始めたことが、洋ラン栽培のスタートとなりました。」


豪華なカトレアは経済成長の証し

 次いでカトレアのブームが到来する。日本経済の高度成長期に合わせるように結婚式やパーティーが派手に行われるようになり、カトレアの需要が伸びていった。
 「芸能関係の表彰式などがテレビ中継され、大輪のカトレアのコサージュが華やかに映し出されたのもこの頃のことです。その後、明るい色彩のデンドロビュームが人気を呼び、洋ランの浸透に拍車がかかりました。」


(須和田農園の豪華なカトレア)

蝶の舞う姿が人気に  − 胡蝶蘭成功のカギ −

 メリクロンの広まりで大量生産が可能になった洋ランの世界、その中でも最も技術開発が成功し、広まったのは胡蝶蘭。
 「ランは通常年1回、限られた季節に開花しますが、胡蝶蘭は咲く季節を変える技術が開発されたのです。」
 四季を問わず胡蝶蘭が大量生産されるようになると、年間を通じて利用できるギフト商品としての提案がなされ、周年花屋さんのウインドーに並ぶようになった。
 胡蝶蘭は、蝶が舞うような花姿、優雅にカーブを描く茎とともに、その名前も優美でたちまち人気を呼ぶ。開店祝い、新築祝い、誕生祝い、叙勲祝い、喜寿、米寿祝いなどの慶事に、また贔屓の役者さんへのプレゼントなど広い範囲で利用されるようになった。
 「現在、ギフトとして利用されるのはほとんど胡蝶蘭です。日本人好みの花姿と同時に、ネーミングがよかったのでしょうね。」


世界蘭会議の開催に続く
世界らん展(東京ドーム)の成功

 「洋ランが爆発的に広まったのは、昭和62年に世界らん会議が日本で開かれ、同時に向ヶ丘遊園で展示会が開催されたことがきっかけです。」
 世界蘭会議は3年毎に行われるラン科植物の学者、研究者の会議だが、同時に行われる展示会には各国の珍しいランが出品されて審査が行われ、その結果がマスコミを通じて世界中に発信される。これが日本で初めての大型らん展になった。
 「世界中からランがドーンと来て、マスコミにも取り上げられ、入場は3時間待ち、会期中の入場者は3万人と大盛況でした。バブル期にさしかかっていた社会状況とも重なって、ランブームが一挙に到来します。」
 そんな状況の中で東京ドームを使ってのらん展の企画が持ち上がったという。


(ヒマラヤ原産の可憐なセロジネ・クリスタータ)

 「今年で9回を迎えます。このらん展は新聞、放送などマスコミ、有力企業の協賛を得たことによって広く知れ渡り、昨年は47万人の入場者を呼びました。その影響か、自治体の展示場やデパートの展示会場を使った洋ラン展が日本各地で 100 ヶ所程も開催されています。こんな現象は外国にもありません。」
 世界らん展では、各部門ごとに審査が行われ、「日本大賞」を始め優秀なものが表彰を受ける。過去8回のうち、江尻さんは最優秀の「日本大賞」を2回受賞という快挙を成し遂げている。

新しいランの創作に意欲  − 須和田農園の取り組み −

 江尻さんが経営する須和田農園では、新しい形、色を求めてランの創作を続けている。
 「私のところではこれまでも世界に通用するランの制作に努力してきました。オリジナルとして登録した品種も50点程あります。
 今年もバンクーバーで開催される世界蘭会議に出品、出展をする予定です。また、農園では各地のらん展に出荷するランの栽培をしていますが、2つの温室は一般の方に公開し、販売を行っています。1年中何かは咲いていますのでぜひご来園ください。」


(くつろいだ雰囲気でランを楽しむ・・・セールスハウス)

須和田農園案内

 千葉県市川市須和田2-26-20(市川駅バス10分)
 TEL 047ー371ー7768
 営業時間AM9:00〜PM5:00 年中無休