荒れ地に咲く野の花の華麗な変身
鉢花の女王 シクラメンの魅力

 わが国では冬の代表的な鉢花として人気の高いシクラメン。葉脈のはっきりした深緑のハート型の葉が幾重にも重なり合って鉢を覆い尽くし、その中心から何十本もの茎が伸びては、蝶が羽を休めているような艶やかな姿の花を咲かせる。
 冬の寒風にさらされ、樹木の葉は落ち、草花も枯れて、すっかり無彩色になった戸外とは対照的に、暖かな室内を華やかに彩るシクラメンの鉢植え。生活の洋風化の中で、ポインセチアとともにクリスマスムードを盛り上げる重要なアイテムになっている。

千葉県農業試験場を訪ねる

 シクラメンの栽培では全国シェア第3位の千葉県。最新の栽培方法を研究している県農業試験場花植木研究室を訪ねた。
 千葉市緑区にある広大な試験場のシクラメン研究用ハウスの一角に、鉢植えのシクラメンの原種があり、素朴で可憐な花を咲かせている。
 「10種類あります。園芸品種の元になったペルシクムは今は花が咲いていませんが、南ヨーロッパ原産のヘデリフォリウムやコウムなどは時期的にも今が盛りです。シクラメンは本来、岩や砂地のような乾いたところに自生し、高温多湿の日本は苦手で、6〜9月は病気になりやすい。園芸品種でもその性質は残っていますが、原種はことに気を付ける必要があります。」と研究室の斉藤技師。
 同研究室ではシクラメンの栽培方法の研究に取り組み、同一種で、肥料の濃度、灌水の方法による生育の違いなどを細かく調べている。



(シクラメンの原種の鉢植え)


(自動灌水装置を取り付けたハウス)

 12月に種を蒔き、発芽までの20〜30日間暗所で管理し、植替えの繰り返し、葉組みと出荷までに1年もかかり、その分値も張ります。試験場では底面灌水、セルトレーなどの利用で省力化した栽培方法の研究も行っています。」
 試験場で研究した結果は、農業改良普及センターを通しておよそ120軒ある県内生産者にアドバイス、また現場での問題点を取り上げ、解決のための実験、研究をしているという。
 「『シクラメンのかほり』という歌がありましたが、これまでの園芸品種には香りはありません。近年、香りのあるものも登場していますが、まだ一般的ではありません。当試験場では8年前、イギリスのシクラメンソサエティから香りのよい原種のプルプラスケンスを取り寄せ、特別に管理したハウスで育てていますが、シクラメンの香りは今後の研究課題です。」

企業的花卉生産をめざす
(有)ハルディン篠原

 ニュータウン開発の進む印西市で鉢物や花苗、野菜苗などを大規模に生産する「(有)ハルディン篠原」。
 初期には売り上げの中で大きな比重を占めていたシクラメンだが、生産品目の多様化の結果、今では売り上げに占める比率は1割程度という。それでも、昨年は20万株を出荷、全国3位の千葉県のシクラメン生産を支えている。
 篠原英子専務にお話をうかがった。
 「5年ほど前から、ギフト用の高価な鉢と一般ものとの2極化が進んでいます。ギフト用は職人が昔ながらの方法で手間ひまかけて育てますので、当然値段も高い。一方底面灌水など大量生産システムが開発され、廉価な商品が作られるようになって、シクラメンも草花の一つという認識が定着しつつあります。」


(底面灌水装置)

 
「当社は大部分がホームセンターなど大口の受注生産です。長野にも農場があり、千葉で種蒔き、育苗し4月には長野に移送し育てます。シクラメンは11月15日を出荷の目安にしており、10月一杯は葉を広げて花の芽を真っ直ぐに伸ばす作業をし、花は摘んでしまいます。」


(葉を広げるのは今も手作業)

 
「品種はF1の中鉢が主体で、パステル系も多少あります。同一に育成しても出来上がりは若干違いますので、葉が広がり花が多く開いた華やかな宅配用、葉が締まって花芽の多い上物、少し劣った中物と3ランクに分けて出荷します。
 ガーデニングが広まり、寄せ植えの素材としてミニシクラメンに人気が出てきています。シクラメンは花びらが凍ると駄目になってしまいますが、軒下のコンテナガーデンなどならば冬も戸外で越せます。一人一人のセンスで楽しんでいただきたいですね。」


(ミニシクラメンのコンテナガーデン)