現代中国事情・その2
〜女一人中国をいく〜
千葉・ゴッドマザー



(清太后の離宮「頤和園」にて)

「中国トイレ事情」

 (百貨店)商域でもトイレ使用には3角の小銭が必要です。公厠の表示のあるトイレは無料なれども、男女の隔壁はあっても各個のドアはなし。万里長城の有料トイレは4角。人民でひしめいている。ドアが壊れてない。あっても内鍵がかからないのがあたり前。驚いた!待ちきれないオバサンが排水孔の上にしゃがんで「我欲排尿」の実践をあそばしていらっしゃる。ぎっしり押しあっている人民諸姉の誰も見とがめず、当然として見過ごしている。これならケニアのブッシュの中で実践した体験は大自然の中で快適爽快であったと再認識。こんな風だから、有料でも水道の蛇口から水が出ることを望んではならない。
 西陽の空港でヒコーキの遅れで3時間半を共に過ごした農業指導官のA先生との対話の中で、私はしみじみと告げたものである。
 「外賓(外国人)が高い入場料を求められるのは中国の経済事情のために我慢するが、トイレ事情がもっとよくなることを望んで止まない。」と。
 中国では中産階級の上に属し、妻は循環器系のドクターだと自己紹介した彼は大きくうなずいた。それでも女ひとり旅、文句を言わず、その国の状況に順応して果敢に旅人をしてゆかねばならない。



(万里長城にてM青年と)


「中国ホテル事情」

 毎夏、高温多湿の日本を脱出して、世界ひとり旅に出かけるのは、日本で旅をすると交通費が高い、宿泊費が高いという不如意から免れないからである。その点、日本を脱出してヨーロッパ諸国、北欧、ギリシャ、トルコ、アフリカを旅すると、とりあえず円高のお陰で納得のゆく旅を楽しめる。
 しかして、中国は交通費が非常に安い。問題はホテルである。英語が通じるホテルは4ッ星から5ッ星。西安で泊まったホテルはシェラトン。5ツ星。スタンダードの部屋で960元であった。洛陽のホテルは4ツ星で500元。このあたりだと日本語の話せる係員もいる。北京で長い滞在を予定していた私は、中国人専用のホテルを世話してもらった。京広中心の近くで一泊280元。朝食は10元でセルフサービス方式。昼食、夕食メニューも極めて庶民的。安くて美味。しかし、保証金を一泊につき400元前納させられる。10泊するとすれば4000元前納し、チェックアウトの時、2800元差し引いて残金1200元お返ししますよというわけ。北京を後に帰国する時点で1200元戻ってきても有難迷惑。抗議したが、頑として譲らない。理由はこうである。
 「中国のビジネスマンの中には不届き者がいて、国際電話をかけまくって、その料金を支払わずに立ち去ることがしばしばある。400元の保証金前納はそれ故厳守されなくてはならない」と。
 色々考えて、代案をフロントに示して交渉を繰り返す。帰国当日に多額の人民元を戻されても迷惑だと抗議。日本人を信用して欲しい。国際電話をかけることもないし、もしかけたとしても料金を踏み倒すようなことは決してしないと、日本語で主張。これが結構相手に判るのです。フロントは翌々日、同行の中国青年M君に釈明したのである。「保証金の残金は日本の紙幣ではお返し出来ないが硬貨でお支払いします。だから安心して保証金を10日分支払ってもらいたい。」と。
 1200元は約16000円である。16000円を硬貨でじゃらじゃら頂戴することを考えるとうっとうしい煩わしさを否めない。私は自分の意向を曲げず、中国人民が自己主張する、あの迫力には及ばないながら、3日分だけは保証金を納めたが、残り7日分についてはホテルを引き払う前夜、数字を明記した紙片を示してきっちり10日分の宿泊費を人民元で支払ってけりをつけた。交渉は堂々と日本語で主張した。
 帰国の荷物を整えている時、2度程部屋の電話が鳴って、受話器の向こうで中国語で何やら話しかけてきたが、所詮会話にはならなかった。後日、中国人主婦と日本人ビジネスマンにこの顛末を話したところ、「貴女はご立派!それでいいのです。」と私のやり方に賛同して下さった。
 女ひとり旅、きっちり自己主張をして旅をするという原則を忘れてはならない。
 帰国してカルチャーショックでへとへと。しかして「日本人は永遠に中国人を理解出来ない」孔建著(講談社)を読んだ。むさぼるように読んだ。64才、女ひとり旅。中国は敬仰の意を払って訪ねたつもりが見事肘鉄。しかし20余年も前から、つまり42才の時から世界の国々、世界の都市をたったひとりで旅している私。しかも貧しいひとり旅をしている私めは、したたかに、しなやかに、転んでもタダでは起きない中国人に似ているのです。自分を前面に押し出して、自己主張をきっちりやらなければ、老女ひとり世界旅なんて不可能です。ただ、私と中国人と異なる所は、中国騎馬民族のようなスケールの大きさと、日本人の中でもとびっきりせっかちで波長が短いことだと自己確認しています。
 解り合える日のために祈りたいものです。


*筆者プロフィール*
1932年岡山市生まれ。五黄申。獅子座。
書道師範。日本書学院、龍峡書道会準同人。
ぎゃらりー・エスポワール(新松戸駅前)経営。
マザーテレサの奉仕団体、財団法人「東京カリタスの家」所属ボランティア・カウンセラー。
流山市平和台5丁目にてフリーマーケット運営(隔月)。一男二女の母、孫10人。パスポート申請1967年。1977年ヨーロッパ10都市めぐり以来30カ国を女ひとり旅。バックパッカーとして、Y.H.アコモデーションめぐり。1997年夏は中国再訪。新彊ウイグル自治区ウルムチ、カシュガルヘ飛び、「西遊記」の世界、天山南路北路を体験。敦煌−西安―北京へ逆コースを辿る予定。

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