木を通して小宇宙を創造する
盆栽(BONSAI)の魅力

 厳しい自然の中で長い間風雪に耐え、かろうじて命を保ってきた樹木たちがある。何百年も断崖の岩場で、あるいは原生林で、大木になれずに生きてきた木、また雪や雷で枝や幹に損傷を受けた木。そうした過酷な状況に雄々しく立ち向かう木々の気高さを盆に写す。小さな盆の中に自然の雄大さ、清らかさを凝縮、見る者をあたかも深山に足を踏み入れたような気持ちにさせる盆栽の名品。日本人の繊細な美意識の極致ともいえる。盆栽はまた、日本古来の「もてなしの心」。床の間に一幅の軸、盆栽をそなえ、香を焚き、茶をすすめる。客人を迎える亭主の心意気の表現でもある。


(高木盆栽美術館屋上庭園)

 盆栽の歴史は中国に始まり、平安時代に日本に移入し、鎌倉、室町期に貴族社会、武家社会と支配階級の間で発達した。江戸時代に入ると道具や技術が目覚ましく進歩、現存する三代将軍家光公のための盆栽記録からも、その関心の深さ、高度な技術がわかる。江戸時代はまた庶民文化が頂点に達した時期でもあり、盆栽も殿様から町民の間まで広く普及した。
 盆栽の理想は大自然の景観であり、常に自然に対する観察力、洞察力を養うことが、盆栽を創造、観賞する時の基本であるという。
 「盆栽は季節ごとに変化する生きた芸術です。作品化して世に出すためには、なによりも愛情と忍耐、そして高度な技術が必要です。何百年と生き続ける盆栽は人類共有の作品として受け継いでいかなくてはなりません。そのためには平和が大切。先の戦争で、古い盆栽がかなり失われてしまいました。」と日本盆栽作家協会代表幹事の山田登美男さん。山田さんは大宮市の盆栽園「清香園」の4代目園主。

 「盆栽作家はプロとしてそれぞれの作風、個性があり、私は伝統的な江戸風を継承しております。盆栽には独特の存在感があり、互いに呼吸を合わせていいものをつくっていく。木から教えられることも多いんですよ。」
 もちろん、一般愛好家が育てる盆栽のほとんどは種子から育てたものや挿し木をしたもの。それでも育てあげるのには数年から数十年もかかる息の長い作業である。
 盆栽教室も盛んで、入門する外国人も多い。
 「針金をかけて無理にねじ曲げたり、人工的に生長を止めたりすると曲解されていますが、私たちは心をこめて教育するといっています。愛情をかければちゃんと答えてくれるのが嬉しいですね。」と盆栽歴7年という参加者。


世界にはばたく『BOSAI』

 戦後、駐留軍の将校たちが伝えた盆栽は今や世界中に広まり、『BONSAI』は世界共通語になった。1989年には世界盆栽友好連盟が創設され、現在38ヵ国に支部がある。4年に1度世界大会があり、今年度は韓国で開催される。
 国内でも種々の展示会がある。その中でもプロ作家が作風を競う「日本盆栽作風展」。22回目
を迎え新春1月9日から14日まで大丸ミュージアムで開催され、レベルの高い作品が並び、内外の愛好家たちで賑わった。

(「日本盆栽作風展」の会場風景)


盆栽の種類

 盆栽は樹によって「松柏盆栽」「雑木盆栽」「花もの盆栽」「実もの盆栽」「草もの盆栽」に分けられる。また、樹形によって「直幹」「双幹」「懸崖」「吹き流し」「根連なり」「模様木」「石付き」「文人木」に分類される。
 盆栽といっても様々のジャンルがあり、初心者でも植物を愛し、自然を貴ぶ気持ちがあれば、その心に触れることができる。最近は山野草や寄せ植えの盆栽など優しい盆栽も人気だという。


◇高木盆栽美術館東京分館◇
(“飯桐(いいぎり)”の盆栽)

 平成6年にオープンした日本で初めての盆栽美術館。都心のビルの中とは思えない広い静かな展示室。正面の床飾りは軸、置物との取り合わせで季節感と風雅を演出。屋上庭園は白壁と置き石の間に樹齢五百年という緑濃い松の盆栽が置かれている。
 木から気を受けるといい、長時間座っている人、毎月必ず来館する人など、ファンも多い。

 盆栽が展示に耐え得るのは一週間が限度。館内培養所で休ませ、あるいは盆栽村で手入れをし、一週間毎に展示作品を変える。
 発案者の高木禮二さん(明光商会社長)は長年の愛好家。盆栽の魅力を広め、文化として保存していきたいと、関係者に呼び掛けて財団を設立、常設美術館を開館した。
(JR・地下鉄市ケ谷駅徒歩1分。明光ビル内)