花の身上書

キ ク

 秋を彩る菊は、春の桜とともに日本を象徴する花。だが、現在ある園芸品種の原産地は中国である。日本に伝来したのは奈良時代末期。隋や唐に送った使節が持ち帰ったと推察されている。
 当初は観賞用としてよりも、不老長寿の薬として珍重された。平安初期には重陽の節句(陰暦9月9日)に菊の花びらを浮かべた酒を飲み、詩歌を作る『菊花の宴』が宮中行事となり、平安末期から鎌倉初期には絵巻物や工芸品に菊の文様が盛んに現れる。
 皇室の紋章として現存する最古のものは1333年。後醍醐天皇の皇子護良親王の令旨にある十六弁の菊花紋。
 江戸時代には広く菊づくりが浸透。園芸品種が200種も現れた(貝原益軒『花譜』)。また菊細工、菊人形も発明され、庶民の生活文化として定着した。
 明治元年(1868年)、太政官布告として皇室の紋章に制定され、さらに日本の花としての風格を備えた。


◎観賞菊の系統
★大菊(頭花径18cm以上)
 観賞用に鉢植え栽培され、厚物(盛り上げ咲き)、厚走り(頭花の外側に走り弁が付く)、管物(小花が管状のもの。太管(ふとくだ)、細管(ほそくだ)、針管(はりくだ)がある)などに分れる。              
★中菊(頭花径9cm以上)
 篠作り、ほうき状の株仕立てに適する。江戸菊、嵯峨菊、伊勢菊、肥後菊など。
★小菊(頭花径9cm未満)
 初冬から晩秋、民家の垣根や農家の庭先など日本中で見られる。大輪の菊も素晴らしいが、可憐な小菊も愛しい。強靭で手間もかからない。盆栽、懸崖、石付け、前垂れ作り、切り花、生け花、また菊人形用の品種などがある。

◎食用菊
 薬用とされた古代から食されている。代表的なのは青森県南部町で生産されている「阿房宮(あぼうきゅう)」。主に干し菊にして出荷され、酢の物やおひたしに。山形県寒河江の「もってのほか」は紫色が主流。


小菊/絵 蟹江慶子

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